教育者としての業績は、1860年墓の王立協会「クリスマス講義」として行なった少年少女を対象にした「ロウソクの科学」と題する6回の講義に集約されていると思います。 この講義録は I 文庫から出ているのですが、私が小学校の卒業式の時、担任の先生からプレゼントされたのが、この文庫本の「ロウソクの科学」でした。
細かいことはよく理解できなかったにせよ、「ありふれたロウソクの炎でもスゴイもんなのだなあ」という感想を持ったことをいまでもはっきりと憶えています。 私は、この本を「物理」を仕事にするようになってからも読んでいるのですが、少年少女にとってばかりでなく、1般的なおとなのみならず、自然科学を勉強したり研究したりしている人にとっても十分に面白く、奥の深い内容を含んでいるスゴイ本だと思います。
よって形成されており、物質の構造や性質を支配する根本は物質を構成する元素の種類と、原子と原子との結合(化学結合と呼びます)の仕方です。 原子と原子との結合の仕方の違いが物質の構造と性質の違いを生むのです。
日常生活を考えてみましても、物と物、あるいは人と人など、何でも結合するにはエネルギーを必要とすることがわかるでしょう。 原子と原子との結合にもエネルギー(結合エネルギー)が必要です。
つまり、無数の原子の結合から成る物質は、そのような結合エネルギーの塊、ということもできるのです。 このような原子間の化学結合によって物質に貯えられているエネルギーを化学エネルギーと呼びます。
化学エネルギーの1部は化学反応の過程で熱エネルギーとして解放され、あるいはまた電気エネルギーとして取り出すことができます。 つまり、人類が火を利用した時、化学エネルギーから得られた熱エネルギーを利用したことになります。

また、電池は化学エネルギーから電気エネルギーを得るものですが、じつは、このような電気が利用されましたのは前章で述べました発電による電気が利用されるようになる以前のことなのです。 たとえば、炭素が燃えて2酸化炭素になったり、水素と酸素が化合して水になったり、あるいは逆に水が電流によって水素と酸素に分解されたりするような現象は、ある物質の変化によってまったく性質が異なる他の物質を生じる現象であり、1般に化学反応と呼ばれるものです。
いま述べました三つの化学反応は化学式を使って表わされます。 このように、ある物質の変化によってまったく性質が異なる他の物質を生じるのは、化学反応前後の物質の結合様式(状態)が変化するためです。
何事の場合でも、変化するためには仕事(エネルギー)が必要です。 結合の変化は、原子間に作用する引力や斥力に逆らって行われますから、そこで仕事が必要になるのです。
この仕事にはエネルギー(具体的には結合エネルギー)を放出する場合と吸収する場合の2種類があります。 多くの場合、化学反応において放出(発生)あるいは吸収されるエネルギーは熱として測定されます。
熱の発生をともなう反応を発熱反応、吸収をともなう反応を吸熱反応と呼びます。 ここに示されるエネルギーは「物質1モルあたり」という値です。
「モル」というのは化学特有の単位で、いろいろ厄介な定義があるのですが、とりあえず、分子量(炭素の質量を12とした時の相対質量)に「グラム」をつけたものと考えてください。 つまり、上記の反応式は、炭素と酸素の化学反応の結果として生成される2酸化炭素1モルあたり93.7kcalの熱(生成熱)が発生することを意味しています。
また、燃料電池とも関係することですが、1モルの水を分解して水素、酸素分子を得るためには68.3kcalの熱エネルギーを必要とする、ということです。 火力発電というのは、要するに化石燃料を燃焼し、その時発生する生成熱を利用して高圧高温の蒸気をボイラーでつくり、タービンを回転させ、電磁誘導作用によって電気をつくり出すことです。
つまり、火力発電の源は化石燃料から発せられる熱エネルギーにあるのですが、それに具体的に関与するのは、化石燃料の主成分で1般に炭化水素(CnHm)と呼ばれる物質です。 物質間の化学反応を利用して電気を発生させる装置です。
そもそも、なぜ化学反応が起こるのかといえば、原子や分子(原子の結合体)が互いに結合してより安定な新しい分子になろうとするからです。 このような反応が起こった時、「より安定化」の産物である余分になって放出されるエネルギーを利用し、電気エネルギーを発生させるのが電池なのです。

ここでも「エネルギー保存則」が支配しています。 昔は電池の利用といえば、すぐ、に思いつくのは懐中電灯くらいのものでしたが、現在、さまざまなタイプの電池は、携帯電話、デジタルカメラ、リモコンスイッチ、などなど、さまざまな小型機器の中で大活躍している重要な電源です。
したがって、私たちが1般家庭や工場などで使うような電気よりも電池の方が新しい電源のように思えるのですが、じつは、電池の方が古いのです。 電池の発明は18世紀末、イタリアで為されてし、ます。
電池は主として乾電池(1次電池)と蓄電池(2次電池)に分類されます。 前者は電池内の電気が失われると2度と電池として使用できなくなりますが、後者はその後も電池内に電流を流してやると充電され、再び電池としての機能が回復し、繰り返し利用できるものです。
自動車のバッテリーと呼ばれるものは、この2次電池です。 電気ピケ剃や携帯電話などにも充電再利用可能な2次電池が使われています。
乾電池(1次電池)と蓄電池(2次電池)の具体的な説明の前に「電気とは何か」の項で述べましたイオンについて簡単に復習しておかなければなりません。 原子は大雑把にいえば、原子核と原子核の周囲に存在する電子から成っています。
原子核の中には正(プラス)電荷e+を持った陽子が原子番号に等しい数だけ入っており、負(マイナス)電荷e−を持った電子の数は陽子の数に等しく、原子は全体として電気的中性が保たれています。 特に重要な役割を果たすのがe−(電子)です。
原子は1般に、1番外側の軌道にちょうど定数の数の電子が存在する時に安定する、という性質を持っています。 ナトリウムの1番外側の軌道の定数は8なのですが、そこには1個の電子しか存在していません。

つまり、ナトリウム原子がどこかから7個の電子をもらってくるか、余分な1個の電子を放出することによって安定構造をとることができるのです。 明らかに後者の方が現実的なので、ナトリウムは1番外側の電子を放出しやすいのです。
本来、軌道に11個の電子が存在しているからこそ電気的中性が保たれるのですが、1番外側の軌道の電子を放出した場合はe−が1つ足りないわけですから、原子全体としての電気的中性がくずれ「+1(e+)」の状態になり、原子Naに対して「Na+」で表わし、ナトリウムイオンと呼びます。 正(プラス)の電荷を持っていますのでプラスイオンあるいは陽イオン(特に+が1個ですので1価の陽イオン)と呼ばれます。
いま述べましたことを化学式で表わしますとナトリウムイオシ(陽イオシ)負切電荷ナNaトリ→ ウムNa+原子十eとなります。

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